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Web 共済と保険2025年4月号

「共済と保険」Web化記念企画
創立75年目を迎えたJA共済連 代表理事理事長 村山美彦氏にインタビュー

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 「共済と保険」のWeb化を記念した特別企画として、創立75年目を迎えたJA共済連の代表理事理事長 村山美彦氏に当協会 専務理事 清 桂司が、①JA共済が注力している現在の課題、②新たな中期計画における戦略、③この先、5年~10年を見据えて取り組む課題(将来課題)、④2025国際協同組合年を迎えて、⑤将来の共済事業に向けて、について2025年1月29日にインタビューをしました。

 本企画では今後も会員団体へのインタビューを通じて、共済団体の理念や取り組みを紹介していきます。
※当記事ではインタビュー当時の年度等をそのまま記載しています。

1.JA共済連が注力している現在の課題

(1)令和6年能登半島地震への対応

(清)JA共済において、今、最も注力している課題を三点挙げていただけますか?

(村山)まずは、昨年発生した能登半島での地震等災害への対応です。JA共済は損害調査における広域支援体制等の確立により迅速な支払いをすることで組合員・利用者に寄り添ってきたという自負がありますが、お支払いした共済金が組合員・利用者の皆さまの生活再建にどう役立つのかを考え、そこで暮らす人々がこれまでの生活を取り戻せるようお役立ちすることが重要です。だからこそ、地域の復興に向けた支援は、JAグループ総出で他の協同組合団体とも連携して進めていく必要があると思っています。

(2)組合員・利用者本位の業務運営

(村山)二つ目は、組合員・利用者本位の業務運営です。時代が変わりゆく中で多くの物事が変わっていきますが、変わらないものは「皆で助け合う」というJA共済の事業理念です。昨今、パーパスという言葉をよく耳にしますが、われわれは昔からそうした使命に基づいて事業を運営してきました。そうした原点に今一度立ち返り、組合員・利用者本位の業務運営に向けた取り組みを強化する必要があります。このため、「組合員・利用者本位の業務運営の態勢強化」を新たな中期計画(JA共済3か年計画(令和7年度~9年度))に盛り込みました。この実現に向けては組合員・利用者に常に寄り添うことが必要です。

(清)能登半島がいまだ復興には至らない中で、JA共済としては共済金の支払いだけでなく、被災地域の復興に向けても強い意識を持って、他の協同組合・共済団体と取り組んでいくということですね。新たな中期計画では、基本的な考え方としてJA共済の全ての事業活動において、「組合員・利用者本位の事業運営」を基調として取り組みを展開すると掲げられていますが、JA共済の使命を果たすためにより幅広く取り組んでいくということでしょうか。

(村山)そうです。われわれが第一に目指すことは、「信頼と期待に応えて、安心と満足を提供すること」です。協同組合組織として、いかなる事業環境においても社会的責任を発揮し、しっかりと対応していかなくてはなりません。併せて、われわれの使命は「保障事業の提供を通じて、組合員・利用者の豊かな生活づくり」に努めることですので、保障提供のみならず、共済事業を中核に据えてわれわれに何ができるのか、ということをもっと考えて事業運営を行っていく必要があると考えています。

JA共済事業の使命

一、JA共済は、農業協同組合が理念とする「相互扶助」を事業活動の原点とし、 常に組合員・利用者の信頼と期待に応え、「安心」と「満足」を提供します。

一、JA共済は、最良の保障・価格・サービスによる「ひと・いえ・くるまの総合保障」の提供を通じて、 組合員・利用者の豊かな生活づくりに努めます。

一、JA共済は、事業活動の積極的な取組みを通じて、豊かで安心して暮らすことのできる地域社会づくりに貢献します。

(3)地域への貢献

(村山)三つ目は地域に貢献していくことです。われわれは組合員主体の協同組合組織ですので、組合員・利用者の願いやニーズが変われば、これまでのやり方、保障やサービスの形も変えていかなくてはなりません。だから、組合員・利用者に寄り添って、彼らが何を求めているのかを対話を通して知る必要があります。われわれは、平成28年度に「地域・農業活性化積立金」を創設し、従来から行っていた健康管理・増進活動や災害救援、交通事故対策活動などの「ひと」「いえ」「くるま」分野の地域貢献活動に加え、地域の実情に応じた「くらしや営農」分野に関するさまざまな活動に、JAと一体となって取り組んできました。その結果、令和5年度までの各県域の活動実績は約38,000件にのぼり、イベントなどの活動には述べ1,900万人に及ぶ方々に参加いただきました。

(参考)JA共済の地域貢献活動サイト-ちいきのきずなhttps://social.ja-kyosai.or.jp/prefecture/

 新たな中期計画では、こうした地域貢献活動について、目的をさらに重視していきたいと考えています。地域・農業活性化積立金の用途は大きく二つあります。一つ目は、今、組合員に必要なものに応えていくこと。二つ目は、将来に向けた活動で、農業を始めたい人が農業に取り組める環境を作ること、併せて地域の人を巻き込み、農業をしなくても地域を良くする活動を一緒にできるような環境を作っていくことです。これからもこうした活動を通じて地域との絆を強化し、組合員・地域住民の皆さまが住み慣れた地域で健康で安心して暮らせる豊かな環境づくりに貢献していきたいと考えています。

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2.新たな中期計画における戦略 -ライフアドバイザー減少の中での新たな体制づくりー

(清)「組合員・利用者本位の事業運営」については、新たな中期計画において、これまでよりも肯定的であり基本的な考え方として、取り上げているという印象を受けましたが。

(村山)こちらについては、まずは令和6年度の事業計画に「組合員・利用者本位の業務運営」として盛り込み、皆が腹落ちしたうえで、新たな中期計画に盛り込みました。人手不足などさまざまな課題がありますが、「組合員・利用者本位の業務運営にかかる取組方針(フィデューシャリー・デューティー取組方針(FD取組方針))」の実践に向けて、より意識的・明示的な取り組みを促進していかなければならないと考えています。

(清)保障の提案やアドバイスを行う「ライフアドバイザー(以下、LA)」の人数が減少する中で「寄り添う」活動について、新たな中期計画に盛り込まれていますが、決して簡単な施策ではないと思います。これに取り組まなければ質へのシフトができないということでしょうか?

(村山)「組合員・利用者本位の事業運営」は全てが、組合員・利用者の皆さまに「寄り添う」活動から始まります。JA共済では3Q訪問活動という感謝の気持ち(サンキュー)をお伝えするとともに三つの質問(Question)により最近の状況を確認するための訪問活動があります。これは契約後のCSを体現させるための活動として20年以上前に始まりました。ある優秀なLAが、「私は組合員・利用者のところに推進に行っているんじゃない。私が持ついろいろな情報を提供しに行くんだ」という話をしていました。組合員が望むことは、まさにそのようなことだと思います。こうした「寄り添う」活動があって組合員・利用者に不足しているものが分かることで保障を提案できます。加入後は3Q訪問活動により、共済金のお支払いに対応するものがないかなど確認します。そうした日々の活動から組合員・利用者の望みを知り、それに応えていくことが協同組合の姿勢だと思います。また、組合員・利用者の接点は訪問だけでなく、デジタルもあれば、JA窓口への来店もありますが、それらが全て組合員・利用者へ「寄り添う」ことにつながっている必要があると考えます。

(清)対面だけでなく全ての接点が、組合員・利用者に寄り添う活動になるということでしょうか。

(村山)そのとおりです。われわれは組合員・利用者の信頼と期待に応え、「安心」と「満足」を提供することが使命ですから、その実現に向けて知恵を出していかなくてはなりません。組合員・利用者の知りたいことに応え、対話を通じて浮き彫りになった不安を解消するような提案を行い、組合員・利用者が納得できるようにしなくてはならないと考えています。最近、インターネットで勉強してそのまま加入する人もいますが、われわれの組合員調査の中ではそうした人はごく少数で、組合員・利用者にとってLAはやはりとても重要な存在です。そうなると、LA数が減少しても、推進できる方法を考えなくてはなりません。サッカーで例えるなら、パスをつないでチーム力でゴールを決めるように、共済推進においても、LAが最適な保障を提供できるようにチームで協力する体制を作らなければなりません。LA数が減少する中で、全てを1人のLAに任せるのではなく、新たな体制をオールJAで築いていこう、というわけです。

(清)そうなると新たな体制では情報をうまく活用していくことが重要になるのでしょうか?

(村山)まさにそのとおりです。特にデジタルの活用にあたっては、JAで得られた情報をLAにうまくパスして、ゴールにつなげられる人材、すなわち情報の差配役を導入していきます。
 併せて、LAは人と関わる仕事なので、そうした仕事が好きな人やLAにチャレンジしてみたいという意欲のある人が、その力を十分発揮できるように連合会として支援していきたいと思います。

(清)JAの窓口業務にも変化があるのでしょうか?

(村山)最近は「ラブレッツ(タブレット型端末)」の導入で共済の事務手続きが簡素化されてきました。JAの窓口で共済の手続き等を担当する「スマイルサポーター」も今後はLAに近いレベルまで育成し、窓口機能を強化することで、「JAの窓口でこんな話も聞けた、こんなこともしてくれた」と言われるようにJAの窓口を情報発信基地にしたいと考えています。

(清)拠点の数も減少していく中で、せっかくできた組合員・利用者との接点を有効に活用したい、ということですね。

3.この先、5年~10年を見据えて取り組む課題 (将来課題)

(清)この先、5年~10年後を特に意識して取り組む課題は何ですか?

(村山)5年先・10年先は不透明な中ではありますが、おそらく「変革の時代」に入っていくのだと思います。われわれは、これに追いついていかないといけません。
 時代が変わっても、われわれの使命である「安心」と「満足」の提供は変わりませんが、人々のニーズが変わればそれに対応しないと使命を全うできません。デジタルなどの新たな技術を用いて、使命を果たせるように工夫をしていく必要があります。今はインターネットでいろいろと対応できる時代となりましたが、最近のわれわれの調査では、JA職員に話を聞いて、保障について考えたいという人も多く、そうした中で全てをインターネットに移行することは、ニーズに対してミスマッチを起こす可能性もあります。一方で、徐々にデジタルを好む世代が育ってくるので、ラブレッツで対応している共済手続きを、スマートフォンでも対応できるような準備を進めていかなくてはならないと思っています。
 組合員・利用者とのコミュニケーションは、非対面でのやり取りだけでなく、対面も組み合わせないと、伝わるものも伝わらなくなってしまいます。そのため対面の頻度は減らしても、残していくことになると思います。
 この先の5年~10年はライフスタイルも変わり、人口も減っていきます。その中でわれわれの使命を果たしていくためには、「過去にうまくいったことでも、今の時代にうまくいくかをまず疑え」と、職員に言っています。今のわれわれにとって、それが本当にベストなのか、という意味で、「前後裁(際)断」(前でもなく後ろでもない今を大切にしていくんだ)という姿勢が大切だと思っています。

4.2025国際協同組合年を迎えて

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(清)国際協同組合年を迎えましたが、どういう年にすべきとお考えでしょうか?

(村山)協同組合と他の団体の活動の違いについては、「利用する」という点ではさほど変わらないかもしれませんが、皆で集まって良くしていく協同組合の活動と他の団体の活動とでは大きな違いがあることを、この国際協同組合年に皆に知ってもらいたいと思います。
 これまでも、行政の手が届かない、しかし個人が行うには難しいような部分を協同組合が担ってきました。例えば、今後少子高齢化で税収という財源が縮小する中にあって、行政による過疎地への対応はますます縮小する懸念があります。地域の誰かが自分達でやろうと言い出さないとその地域は衰退してしまうことになります。だからこそ、そのまとめ役として協同組合が必要だと思います。そのようなメッセージを出していくことが、この年に行うことではないでしょうか。
 それと協同組合である限りは、こうした組合がなぜ誕生したのか、そこには目的があって、組合員の望みがあったわけなので、組合員に新しい望みができた時に、協同組合としてどう実現するかということを一緒に考えていかなくてはなりません。われわれは組合員・利用者の声を聴くことを強化して、その声が今の事業でできるものであれば事業の中で対応し、そうでないものはどうしたら良いかを皆で話し合い、組合員自身で再び作り上げなくてはなりません。そのようなことを考えるのに国際協同組合年は良い機会だと思います。

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JA共済では、組合員とJAとの共済契約という関係をこえた地域の仲間としての絆、そして国際協同組合年を迎え、世界で拡充の機運が高まっている協同組合と共済の未来について、放送作家・脚本家の小山薫堂氏を起用した事業理念広告「助け合いの輪」の総集編として、小山薫堂氏と村山美彦氏の対談を実施しました。

■人をつなぐ助け合いの輪(前編)(小山薫堂氏と村山美彦氏の対談):https://youtu.be/HJsG3CQIjX0?si=SXTw2Hp1G1xsiKUH
■人をつなぐ助け合いの輪(後編):https://youtu.be/8sjslMBKO2k?si=Wk1ZSnHyWSRLcG8F

5.将来の共済事業に向けて

(清)1月末で75年目を迎え、これから100年に向かわれますが、将来の事業についてのお考えなどお聞かせください。

(村山)75年間の振り返りが必要だと思っています。時代に合わせてわれわれは変化しています。過去にも大きく変化した時期があり、どのような環境でどう変えてきたのかを、これから自分たちが変革を成すためにも、まず、振り返り、学ばないといけません。
 不透明な時代ほど、変化に対応し改革の「知恵」がある人が求められます。既にそのような時代に入っており、75年目という節目にあって、誰のために、何のためにこの事業を行っているのかを常に考えて、改善や変革をしていく必要があります。
 JA共済事業も変革の時期を迎えています。変えるべきことは変えるという意識を持ち、新たな設計図を描くことによって、次の時代に入っていくものだと考えます。

【プロフィール】

JA共済連 代表理事理事長 村山美彦氏
JA共済連全国本部にて体制整備支援部長、普及部長、埼玉県本部にて本部長、2014年に常務理事、2017年に代表理事専務を経て2024年より現職。
座右の銘:「前後裁(際)断」「暗いと不平を言うよりも進んで明かりをつけましょう」

【組織概要】

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資料:当協会作成「日本の共済事業―ファクトブック2024―」から作成。事業規模は「2024 DISCLOSURE JA共済連の現状」を引用

「共済と保険」Web化記念企画創立75年目を迎えたJA共済連代表理事理事長村山美彦氏にインタビューJA共済連代表理事理事長村山美彦氏専務理事清桂司