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Web 共済と保険2025年4月号

IYC2025における協同組合共済への期待

日本大学 商学部 教授、日本共済協会 共済理論研究会 主査
岡田 太(おかだ ふとし)

1.国際協同組合年の趣旨

 2025国際協同組合年(IYC2025)を迎え、日本でも各地で関連イベントが始まっています。過去の国際年を振り返ると、「ラクダ科の国際年」(2024年)、「平和の保証としての対話の国際年」(2023年)、「持続可能な山と人の営みの国際年」(2022年)など、世界各国が取り組むべき社会課題がテーマに設定されているようです。それでは協同組合がテーマであるとはどのような意義があるのでしょうか。国際協同組合年の趣旨は、多様な分野で持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する協同組合の役割を高く評価するとともに、その認知を広め、振興することです。2012年に続き国際年となるのは極めて異例です。2016年にユネスコ(国際連合教育科学文化機関)によって「共通の利益の実現のために協同組合を組織するという思想と実践」が無形文化遺産に登録されたことと相まって、協同組合への期待の大きさを感じます。共済団体の皆様におかれましては、大いに自信と誇りを持っていただければ幸いです。

2.保険(保障)分野における貢献

 2023年に国連総会で採択された決議によると、協同組合の貢献は、人間らしい雇用の創出、貧困と飢餓の解消、教育、社会的保護、金融包摂など、広範囲に及びます。日本の主な共済団体が加盟する国際協同組合保険連合(ICMIF)は、開発途上国の保険(保障)市場へのアクセスを改善するために、「5-5-5マイクロインシュアランス」の開発支援を始めとする、さまざまな取り組みを行っています。海外進出するグローバルな保険会社と異なり、ICMIFは地域に根を下ろすローカルな協同組合や相互扶助の保険組織の育成を重視しています。
 日本の共済事業の歴史をひもとくと、保険市場で必要な保障を(手ごろな価格で)入手することが困難な状況に直面した協同組合は、互いに助け合い、必要な保障を創り出し、組合員の生活の安定に貢献しました。日本共済協会「日本の共済事業-ファクトブック2024-」によると、2023年度の共済事業は組合員数7,793万人、受入共済掛金6兆1,659億円、支払共済金4兆6,105億円に到達し、初期の課題は解決されたようにみえます。もっとも、残された課題もあります。その一つとして、近年プロテクションギャップが注目されています。

3.プロテクションギャップ

 プロテクションギャップとは、経済的損失に対して期待される補償額と実際の保険による補償額との差をいいます。国際保険協会連盟(GFIA)の「プロテクションギャップの報告書」(2023年)によると、それは供給者側と需要者側の両方の要因によって生じます。供給者側の要因には、政府や保険会社による保障/補償の不足などがあり、需要者側の要因には損失軽減への取り組み不足、他の支出を優先する、保険料の負担が重い、リスクを認識していないなどがあります。大規模自然災害のプロテクションギャップは良く知られていますが、上記の報告書では、自然災害のほか、サイバー、年金、医療の四つをグローバルプロテクションギャップとして取り上げています。
 プロテクションギャップの是正は簡単なことではありません。例えば、地震災害の場合、政府がバックアップする地震保険は保険会社の引受額を拡大し、供給量を増やすことができるのに対して、地震に備える共済については政府のサポートはありません。しかし、需要者側に着目すると、防災・減災の学習と準備、被災地支援などの活動は、ギャップの縮小に貢献します。過去の経験から明らかなように、大規模災害は社会的格差や社会的弱者を生み出します。それを防ぐためにはプロテクションギャップの是正が必要不可欠です。組合員への保障の充実とあわせて、さまざまな支援活動が共済事業に期待されています。
 また、他のプロテクションギャップの是正について、例えば、年金や医療の場合、社会保障制度の学習が重要になります。学習は協同組合原則(第5原則)にうたわれているように、協同組合にとって重要な活動の一つです。引き続きライフプランニングの推進に取り組んでいただきたいと思います。

4.組合員本位の業務運営

 2017年に「顧客本位の業務運営に関する原則」が策定され、2024年に改訂版が公表されました。金融庁は、①顧客本位の業務運営に関する方針の策定・公表等、②顧客の最善の利益の追求、③利益相反の適切な管理、④手数料等の明確化、⑤重要な情報の分かりやすい提供、⑥顧客にふさわしいサービスの提供、⑦従業員に対する適切な動機づけの枠組み等の七つの原則を定めています。これらは国民の安定的な資産形成を図るために遵守し、実践していくためのものであって、外貨建保険を始めとする資産形成型の保障を扱う共済は少ないため関係ないようにみえますが、保険会社は顧客本位の重要な指標(KPI)として顧客満足度や感謝の声や苦情を公表するなど、共済事業にとって参考になる取り組み事例があります。
 組合員本位の業務運営は共済事業の中核です。とりわけ、大規模共済は連合会組織で運営されているため、運営方針を定め、取り組み状況について組合員を始め広く公表していくことが望ましいと考えます。

 最後に、2025国際協同組合年が、協同組合の存在意義と役割について多くの人が知り、共感する一年になることを心より願っています。

(参照URL)

IYC2025における協同組合共済への期待日本大学商学部教授日本共済協会共済理論研究会主査岡田太おかだふとし