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共済について共済Q&A
- Q1 協同組合はいつから活動しているのですか?
世界の協同組合の起源は1844年の「ロッチデール公正先駆者組合」という消費者生協であったといわれることが多いようです。資本家が牛耳る市場で物価高、高利貸、不正取引、長時間労働に苦しむ人々が協同組合を立ち上げて暮らしを守ろうとしたことが起源であること、「公正先駆者」と名乗って倫理性を重んじたことは、現在の協同組合においても大切に引き継がれています。
わが国においては、江戸時代末期から、農業協同組合の起源となる農村協同組織が各地で設立され、その代表的なものが、大原幽学による先祖株組合と二宮尊徳の指導した報徳社であるといわれています。- Q2 協同組合の理念とはどのようなものですか?
1つひとつの協同組合にはそれぞれ定めた理念がありますが、世界の協同組合は、根本的な理念を共有しています。
国際協同組合同盟(ICA)が1995年に「協同組合のアイデンティティに関する声明」を決定し、協同組合の定義・価値・原則を明文化しました。協同組合は「共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人々の自治的な組織である」と定義され、「それぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、誠実、公開、社会的責任、そして他人への配慮という倫理的価値を信条とする」ことが協同組合の価値である、と宣言されました。それぞれの協同組合が掲げる理念はこれらの定義や価値を基礎にしています。- Q3 国際協同組合同盟(ICA)のアイデンティティに関する声明とはどのようなものですか?
ICAの「声明」には、「協同組合の価値を実践に移すための指針」として7つの原則が示されており、それぞれの協同組合がこれらの指針に従って事業を行うことで、協同組合の価値が実現されると考えられています。代表的なものを3つご紹介します。
- 一人1票
組合員は平等で組合は民主的に運営されています。具体的には、株主の議決権が持株数によって決まる株式会社とは違って、多く出資した組合員も、そうでない組合員も1票ずつの議決権を持っています。「会社の意思決定を出資額の多い株主に委ねる」という考え方ではなく、「数多くの組合員の意思に組合の運営を委ねることで、組合の目的や倫理的価値を守っていく」というのが、協同組合の考え方です。 - 教育・訓練
協同組合に出資し、運営し、その事業を利用する組合員に、また、協同組合の業務に携わる役職員に、協同組合とは何か、何を目指して事業を行うのかを教育し、訓練することが、理念を実現するための原則として重視されています。株式会社と顧客との関係にはない要素です。 - コミュニティへの関与
組合員が暮らす場としての社会(地域)のあり方を重視し、その持続可能な発展のために活動することが、協同組合の原則とされています。
- 一人1票
- Q4 協同組合は、どのような点で株式会社と違っているのですか?
1.協同組合と株式会社の違いを理解するため、まず株式会社の特徴を見てみましょう。
(1)株式会社の事業の目的
モノを生産する事業を例に説明しましょう。
事業を始めるには、店舗、製造機械、原材料などを用意する必要がありお金が必要です。株式会社は、必要な資金を株式の発行という形で不特定多数の人たちからも調達することが可能です。
お金を出す(株式を買う)側の立場からすると、その元手が無価値になることなく(株式会社の倒産など)、会社が利益を生み、利益の分配を受け、将来的に株式の価値が上昇して元手を上回ることを期待して、資金を提供し(株式を買い)ます。
その会社が十分に利益を出せるかどうかが、お金を提供するかどうかの重要な判断のポイントとなりますので、会社にとっても利益を生み出すことが経営上最も重要な目的となります。
株式会社は、社会(不特定多数の人たち)のニーズに応えた商品やサービスを提供することを通じて利益をあげるために、ひとびとが必要としているよりよい商品、サービスを生み出そうと、絶え間ない経営努力を続けています。(2)株式会社の所有者はだれですか?経営する人は誰ですか?
株式会社のお金を提供した人は株主と呼ばれ、株主がその株式会社の所有者となります。株主は、会社経営に関する重要事項(事業の基本方針、取締役の選任、利益の処分方法など)を決定する株主総会で、所有株式数に応じて株主に与えられる議決権を行使して、間接的に会社運営に参画することができます。
一方、具体的な経営は、株主総会で選ばれた取締役で構成される取締役会において決定され、代表取締役を頂点とする取締役・管理職・従業員によって運営されています。
このように、株主が株主総会で選出された少数の専門的経営者に実質上の経営をまかせている(お金を出している会社の所有者と経営者が分離している)状態を 「所有と経営の分離」 といいます。2.では、協同組合は株式会社と何が違うのでしょうか。
(1)協同組合の事業の目的
協同組合は、共通の目的をもった人たちが、その目的を達成するために組織した相互扶助組織です。協同組合がその目的に沿った事業を実施し、各組合員がこの事業を利用することによって、組合員の利益を増進する関係になります。
例えば、ある商品を必要とする人たちが集まって、協同組合を設立したとします。
株式会社と同様、事務所を借りる、機械や原材料を購入するなどお金が必要となり、協同組合を組織する人たちは必要なお金を出し合います。この協同組合は、組合員が必要とする商品を生産して、それを組合員のために提供することが事業の目的となります(組合員への直接奉仕)。なお、出し合ったお金のことを出資金と言い、お金を提供した人たちのことを組合員と言います。
株式会社は、生産した商品を株主ではない人たちに販売して、そこから利益を生み出し、事業を通じて得た利益を株主に分配することが目的であり、そこに違いがあります。
出資という点は同じであっても、直接協同組合の事業から商品やサービスが提供されることを目的とする出資と、株式会社の事業から得た利益の分配や株式価値上昇を目的とする出資とは相違があります。なお、協同組合の商品やサービスの提供を受けたい人は、出資金を支払って組合員になることが求められます。(2)協同組合を経営する人は誰ですか?
協同組合は、組合員全員が出資額に関わりなく一人1票の権利で組合の運営に参加し、組合の方針を決め、これを実践するという組合員による経営への直接参加が原則であり、株式会社と大きく異なります。
なお、協同組合の組織が大きくなると、組合員全員を集めた総会(最高意思決定機関)は開催が困難となるため、代議員による総代会で組織経営に関する重要事項(事業の基本方針、役員の選任、剰余金の処分方法など)を決定するようになります。総(代)会で選出された役員と職員により事業運営がされる点では、株式会社に類似しています。(3)営利を目的に事業を行ってはならないと法律にありますが、どういう意味ですか?
一部の協同組合法には、「営利を目的としてその事業を行ってはならない」旨が定められています。
「営利」とは、会社などがその事業によって利益をあげ、その利益を所有者(株式会社であれば株主)に分配することをいいます。
したがって、協同組合が営利を目的としてその事業を行わないということは、事業によって利益をあげ、その利益を所有者(出資者)に分配することを主たる目的として事業を行わないということです。(4)営利を目的にしないということは、赤字でもいいの?
「営利を目的に事業を行ってはいけない」ということと、事業によって利益をあげてはいけないであるとか赤字を出してもいいということは結びつきません。
事業活動(組合員が必要とする商品やサービスを提供すること)では、銀行から借りたお金に対して利息を支払う、水道光熱費を支払う、また、職員を雇っている場合は給与を支払う必要がありますので、これらの費用を組合員への商品・サービスの提供の対価として受け取る収入からまかなっていく必要があります。
収入が支出を下回る赤字の状況が続くと、お金が不足して、継続的な事業運営が困難になります。健全な事業運営ができなければ、事業の継続を断念して協同組合を解散するとか、事業を継続するため組合員に追加的に出資をお願いする必要が生じてしまうかもしれません。
したがって、営利を目的としない協同組合にとっても健全な経営を確保しつつ組合員のために実施する事業の成長発展を図るうえで、利益(剰余)は必要です。(5)協同組合が実施する配当は営利目的になりませんか?
株式会社の配当は、株式数に応じた「利益」の分配です。協同組合法では、組合員が事業を利用した分量に応じて配当する事業利用分量配当と、一定の範囲内において払込済出資額に応じて行う出資配当が認められています。
①事業利用分量配当
協同組合が組合員へ商品・サービスを提供し、組合員は代金や手数料などの費用を協同組合に支払いますが、その費用が協同組合を運営するために必要な経費を上回り剰余金が生じた場合に、「いただき過ぎた部分をお返しするという趣旨」で配当されるものです。
したがって、利益の分配ではなく、費用の一部と見なして税務上も費用(損金)として分類されます。そのため、配当は組合員の出資額に対してではなく、事業の利用額の多寡に応じて決められます。②出資配当
協同組合に認められている出資配当は、出資に対する「利息という趣旨」で、払込済出資額の年1割以内で配当するよう制限されています。(6)まとめ
協同組合が株式会社とどのように違うのかについて、これまで説明してきた内容をまとめたのが次の表です。
協同組合は、共通の目的をもった組合員が自ら出資し、運営し、利用するという点で、株式会社における株主や顧客の関わり方とは異なる組織です。
また、出資の額を問わず、一人1票の原則で民主的に運営される「人と人との結びつき」による組織であることも、協同組合の大きな特徴です。協同組合 株式会社 目的 組合員への商品・サービス等の提供を通じた組合員利益の増進・協同組合の発達を通じた国民経済の発展 社会への商品・サービス等の提供を通じた企業利益の追求・株主への配当・企業価値の向上 出資者 組合員 株主 利用者 組合員 不特定 運営主体 組合員 株主 運営方法 一人1票 一株1票 - Q5 協同組合に関する近年の国連の動きはどのようなものですか?
- 国際協同組合年
2012年は、国連の定めた「国際協同組合年(International Year of Co-operatives=IYC)」でした。これは、2007年の世界的な食料危機と、2008年以降の金融・経済危機に対して、協同組合が耐久力・回復力を示したことを背景として、国連が協同組合を「人々の経済社会開発への最大限の参加を促している」、「持続可能な開発、貧困の根絶、都市・農村におけるさまざまな経済部門の生計に貢献できる事業体」と評価し、世界全体で1年を通じて協同組合の社会的認知度の向上、協同組合の設立・発展の促進、そのための政府・関係機関への働きかけに取り組もうとしたものです。
日本においても、協同組合の歴史・現状・課題、東日本大震災の際に果たした役割、国際協同組合年の意義をまとめたパンフレットが作成・配布され、各種のイベントが開催されました。一連の取組みのなかで、「地域のために活動する協同組合」という協同組合像と、「政府と営利会社に加えて、協同組合が有力な構成要素となる」新しい社会像が明示された点は、意義のあるものでした。
また、2023年11月3日、国連総会は、2025年を、2012年に続き2回目の「国際協同組合年」とすることを宣言しました。
この宣言は、「社会開発における協同組合」と題する国連決議のなかで行なわれたもので、協同組合の取り組みをさらに広げ進めるため、また、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた協同組合の実践、社会や経済の発展への協同組合の貢献に対する認知を高めるために、国連、各国政府、協同組合が、この機会を活用することを求めています。 - SDGs
2015年9月、国連は、2030年を目標年次としてすべての国と関係者が実行すべき行動計画である「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための開発アジェンダ」を採択し、そのなかで、協同組合が民間セクターの一員として役割を担い、その活動を促進すべきことを明記しました。
この「アジェンダ」の中心となる「持続可能な開発目標(sustainable development goals=SDGs)」に関する施策を実施するため、日本政府は2016年12月に「SDGs実施指針」を決定しました。そのなかの「推進に向けた体制」において、連携すべきステークホルダーの一員として、協同組合が明記されています。
これらは、持続可能な社会づくりに深く関わってきた協同組合の取組みが、国内外で広く認知されていることを示すものです。 - ユネスコ無形文化遺産
国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、2016年11月、ドイツからの提案に基づいて「共通の利益の実現のために協同組合を組織するという思想と実践」を無形文化遺産として登録することを決定しました。「無形文化遺産の保護に関する条約」において、無形文化遺産は「慣習、表現、知識、技術等で、世代から世代へと伝えられ、コミュニティ等によって不断に再現されるもの」と定義されています。登録を決定した政府間委員会は、協同組合を「共通の利益と価値を通じてコミュニティづくりを行うことができる組織であり、雇用の創出や高齢者支援から都市の活性化や再生可能エネルギープロジェクトまで、さまざまな社会的問題への創意工夫あふれる解決策を編み出している」と評価しました。わが国の協同組合も、地域社会が直面する課題に対して有効な解決策を生み出し、よりよいくらし・仕事・地域を創っていく不断の取組みを通じて、協同組合の思想と実践をさらに発展させて次世代に引き継いでいくことが期待されています。
- 国際協同組合年
- Q6 協同組合共済はどのような役割を果たしてきたのですか?
わが国では、第二次世界大戦後の苦しい時代に、より良い暮らしを求めて、多くの協同組合が生まれ、共済がスタートしました。各種の協同組合が、それぞれの組合の構成員や性格に応じたニーズを踏まえた「組合員に必要な保障」を「組合員の手に届く水準の共済掛金」で提供し、発展してきました。
わが国の共済が果たしてきた主な役割を4点ご紹介します。- それぞれの協同組合の性格に応じた形で、基本的な生活保障を実現するための制度を持続させてきました。各組合の組合員の暮らしに必要な保障とは何か、という視点で共済仕組みを開発し、提供してきた、ということです。
- 少子高齢化の進展に伴い、医療や年金など、国の社会保障制度は徐々に後退し、国民の負担が増えてきました。共済は、そうした社会保障を補完する役割を担っています。
- 共済は、組合員が主体となり、自らの暮らしに必要な保障としてあるべき姿(保障内容や掛金水準)を相互扶助という形で実践することによって、保障業界全体に保障事業のあるべき姿を問いかけてきました。
- 組合員への配当を目的とせず、相互扶助という理念に基づいて、健全性の高い事業展開を持続し、地域社会に貢献し続けています。
- Q7 共済と保険に適用されるルールは同じですか?
共済は保険と同じ法律が適用される場面と、保険とは異なる法律が適用される場面があります。
まず、協同組合が共済事業を実施できる根拠・条件、組合の組織・運営、行政庁による監督に関する法律は、協同組合の種類ごとに定められています。例えばJAは「農業協同組合法」に基づいて、生協は「消費生活協同組合法」に基づいて、それぞれ共済事業を実施しています。これらの法律には、組合の設立手続、組合員の資格・権利、組合の行う業務の範囲、総会・理事会に関する事項、行政庁による検査・命令などの基本的なルールが定められています。保険会社の場合、これに相当するルールは、「保険業法」と「会社法」という法律に定められており、それらは協同組合・共済事業には適用されません。それぞれの協同組合には、その設立の趣旨や協同組合の理念・原則を反映した、一般の会社とは異なるルールが適用されています。
一方、協同組合が組合員と締結する共済契約や、保険会社が契約者と締結する保険契約の内容については、「保険法」という法律がともに適用されています。この法律には、契約時の告知、共済証書・保険証券の交付、共済金・保険金を支払わない場合、共済金・保険金の支払期限、共済契約・保険契約の解除など、組合・保険会社と加入者との間の権利義務に関する基本的ルールが定められています。これらの点については、共済加入者と保険加入者は共通のルールの下で保護されているといえます。- Q8 協同組合はどんな法律に基づいて設立され、共済事業を実施しているのですか?
協同組合が共済事業を実施できる根拠や条件、共済事業をおこなう協同組合の組織・運営、監督については、協同組合法に定められています。
わが国では、組合の種類ごとに、農業協同組合法、水産業協同組合法、消費生活協同組合法、中小企業等協同組合法の4つの協同組合法があり、それぞれの協同組合の根拠法とその所管庁は以下のとおりとなっています。根拠法
根拠法の所管庁
協同組合名(緑色は、日本共済協会の会員)
農業協同組合法
農林水産省
農業協同組合(※1)、JA 共済連
水産業協同組合法
漁業協同組合(※1)、JF 共水連
消費生活協同組合法
厚生労働省
こくみん共済 coop<全労済>
日本再共済連、コープ共済連
全国生協連、生協全共連
防生協、神奈川県民共済(※1)
全国電力生協連、全国交運共済生協
JP 共済生協、電通共済生協、森林労連共済
全たばこ生協、全水道共済、自治労共済、教職員共済
全特生協組合、全国酒販生協、全国たばこ販売生協
全国町村職員生協、都市生協、警生協
全日本消防人共済会中小企業等協同組合法
経済産業省
火災共済協同組合(※1)、日火連
トラック交通共済協同組合(※1 または※2)、交協連(※2)
自動車共済協同組合(※1)、全自共
福祉共済協同組合(※1)、中済連(※1)
開業医共済(※1)
全米販(※3)、日本食品衛生共済協同組合(※3)※1の監督は都道府県。※2は国土交通省、※3は農林水産省の監督。それ以外は根拠法の所管庁の監督。