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避難の心得
① 想定にとらわれないこと
災害は、想定を超えて発生します。東日本大震災の津波は、高さ10mの日本一の防潮堤を乗り越え、ここまでは来ないと考えられていたエリアまで飲み込みました。防潮堤は津波を防げず、多くの方が犠牲になりました。
また、地球温暖化の影響により短時間強雨*(滝のように降る大雨)の発生頻度は年々増えており、これまで経験したことのないことが起こっています。「この災害はこれまでの災害よりも大きなものかもしれない」と考え、避難することが重要です。
*1時間に50ミリ以上、傘は全く役に立たなくなり、車の運転が危険になる雨。河川や排水施設の状況によっては、土砂災害や水害が起こる場合があります。
【コラム:世界一の堤防で防げなかった東日本大震災の津波】
田老村(現・岩手県宮古市)にあった防潮堤は、高さ10メートル、総延長2,433メートルと見上げるほど巨大であり、「万里の長城」と呼ばれていました。釜石には、「湾口防波堤」という、世界一の防波堤としてギネスブックに載っている巨大建造物がありました。
しかし、東日本大震災の津波は、過去最大だった明治三陸津波の高さ15メートルを超え、防波堤はずたずたに破壊されました。津波防災の堤防は、「記録に残る過去最大級の津波」を想定し造られているため、大きな堤防があることで安心し逃げ遅れた方がいて、多くの人命が失われてしまいました。
行政の施策がリスクをゼロにするものとの思い込みを改める必要があります。この次にくる津波はどのような大きさかわからないことを肝に銘じ、想定にとらわれない行動が求められます。
② 最善を尽くすこと
そのときにできる最善の避難をすることが大切です。東日本大震災では、「過去の津波では大丈夫だった」「ハザードマップ*でもここまで津波は来ないとなっているから大丈夫」「防潮堤があるから大丈夫」と十分な避難をしなかったため多くの方が犠牲になりました。
*その地域の地形・地盤の特徴、過去の災害履歴などをもとに、自然災害の発生による被害を予測し、被害が想定されるエリアや避難場所・避難経路などを表示した地図
③ 率先して避難すること
避難する(逃げる)ということは、なかなか勇気がいるものです。誰も避難しないと気おくれしてしまいますが、強い意志をもって避難することが大切です。あなたが最初に避難すれば、ほかの人もついていき、その人達の命も救うことができるでしょう。東日本大震災では、避難する中学生の姿を見て、小学生や地域住民も後に続き助かりました。
【コラム:津波てんでんこ】
三陸地方沿岸部には、「津波が来たら、各自てんでばらばらに高台に逃げろ」という「津波てんでんこ」という言い伝えがあります。 家族が助かるには、まず自分自身が助かることです。津波が来たらそれぞれ避難することを家族で確認しておけば、「家族の迎えを待ち逃げないで亡くなる」、「家族を探しにいって逃げ遅れる」ということを防げるでしょう。
自分の命を守る行動(避難)ができれば家族みんなでまた会うことができます。大切な家族を守るのは、私たち一人ひとりです。お互いが避難していることを信じ合えていれば、自分を、家族を信じて逃げることで命を守ることができるでしょう。家族みんなが「自らの命は自らが守る」という強い意志を持って避難することが大切です。